「ととのう」って何が起きてるの?

 

 

サウナで“ととのう”とは何か?〜身体と脳に起こる劇的な変化〜

目次

はじめに:なぜ人はサウナで“ととのう”のか?

「サウナ→水風呂→外気浴」という流れを繰り返した後に訪れる、言葉にできないほどの心地よさ――。多くのサウナーたちはこれを「ととのう」と表現します。

SNSでは「#ととのった」などのタグも見られ、もはや一つの文化現象となっています。しかし、“ととのう”とは単なる気分の問題ではなく、身体や脳内で明確な生理的変化が起こっていることをご存知でしょうか?

本記事では、「ととのう」とは何か、そのとき人間の身体と脳に何が起きているのかを科学的に解説していきます。


1. 「ととのう」の基本ステップ:サウナ→水風呂→休憩(外気浴)

一般的に“ととのう”と感じるには、以下の3ステップが必要です。

ステップ1:サウナ(約80〜100℃、8〜12分程度)

身体を高温で温め、血管が広がり、心拍数が上昇。発汗により老廃物も排出されます。

ステップ2:水風呂(約15〜20℃、1〜2分)

一気に冷水に入ることで血管が急激に収縮し、血液が内臓へ集中。交感神経が一気に優位になります。

ステップ3:外気浴または休憩(5〜10分)

ベンチなどで休むと、今度は副交感神経が優位になり、身体がリラックス状態に入ります。このときに「ふわ〜っ」とした感覚や、意識が拡張するような気持ちよさが訪れます。これが“ととのう”状態です。


2. 自律神経のスイッチング:ととのいの鍵

人間の神経系には、意識的にコントロールできない「自律神経」が存在します。これは大きく分けて2つ。

  • 交感神経(活動・緊張・集中)
  • 副交感神経(休息・回復・リラックス)

サウナでは、この2つの神経の切り替えが連続的に起こります。

段階 状態 優位な神経
サウナ 高温刺激 交感神経
水風呂 急冷刺激 交感神経(さらに強化)
外気浴 血流のリバウンドと呼吸の安定 副交感神経(急激な切り替え)

この交感神経と副交感神経の切り替えが、「ととのい」に繋がる神経系の“ジェットコースター”のような体験を生み出します。


3. 脳内で起きていること:快感ホルモンの分泌

🔹 エンドルフィンの放出

“ととのう”の正体に最も関与しているのがエンドルフィンと呼ばれる脳内ホルモンです。

これは「脳内麻薬」とも呼ばれ、幸福感、陶酔感、無重力感をもたらします。実際、マラソンなどの長距離運動の終盤で感じる「ランナーズハイ」にも関係している物質です。

サウナや冷水による身体のストレス刺激は、適度な「苦痛」として脳に伝わり、それに対抗する形でエンドルフィンが分泌されます。その結果、極度のリラックスと多幸感が訪れます。

🔹 オキシトシンとセロトニンの活性化

さらに、サウナ体験後には「オキシトシン(愛情ホルモン)」「セロトニン(安定・幸福ホルモン)」の分泌も促進されます。

この影響で、人とのつながりを感じやすくなったり、ストレスが減少したりすることも報告されています。


4. 血流・免疫・疲労回復の観点から

血行促進

サウナによって血管が拡張 → 水風呂で収縮 → 外気浴で再び拡張。
この“血管のポンプ運動”によって、全身の血流が一時的に劇的に改善します。

特に脳・内臓・筋肉への酸素供給が活発化し、「スッキリ感」や「クリアな思考」に繋がります。

免疫力の向上

適度な熱ストレスは、ヒートショックプロテイン(HSP)というたんぱく質の生成を促します。これは細胞修復や免疫力アップに関与し、病気予防にも効果があるとされています。

睡眠の質の向上

副交感神経が優位になった状態で夜を迎えると、深い眠り(ノンレム睡眠)の割合が増えることがわかっています。

サウナ後の睡眠が「爆睡」と表現されるのはこのためです。


5. “ととのい”は人によって違う?

「ととのった〜!」という感覚は人それぞれ。感受性や体質、気温や湿度、施設の環境、さらにはその日の体調によっても変化します。

一部の人は「軽い酩酊感」「ビジョンのようなものが見える」「音が立体的に聞こえる」など、プチトリップのような体験をすることもあるようです。これは脳の覚醒と鎮静が同時に起きている独特の状態だと考えられます。


結論:ととのうは“合法的な脳内トリップ”

“ととのう”とは、身体の内外で起きる複合的な生理現象の結果として得られる「深い快感」なのです。

それは単なるリラックスではなく、

  • 神経系のスイッチング
  • ホルモンの放出
  • 血流の変化
  • 意識の変容

などが重なって起きる、非常にユニークな体験です。

サウナは、まさに「熱と冷と静」の三位一体によって心と身体を再構築する装置とも言えるでしょう。


最後に

「ととのい」は一過性の快楽だけでなく、心身の健康を支える大切な手段になり得ます。ただし、無理な我慢や体調不良時の利用は危険も伴うので、自分に合ったスタイルで楽しむことが大切です。

次にサウナに入るときは、ぜひこの「科学的背景」を思い出して、自分のととのいの瞬間をじっくり味わってみてください。


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